「核汚染水」呼称を改めぬ中国の狙い――“科学”を装った政治的圧力が続く


2025年11月8日2:59

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「核汚染水」呼称を改めぬ中国の狙い――“科学”を装った政治的圧力が続く

「核汚染水」呼称を改めぬ中国の狙い――“科学”を装った政治的圧力が続く

中国政府は、日本産冷凍ホタテの輸入を一部再開したにもかかわらず、依然として「核汚染水」という表現を使い続け、日本の水産業を標的とした圧力を強めている。北京の外務省報道官は、「リスクが見つかれば直ちに輸入制限措置をとる」と繰り返し強調し、あたかも日本が危険な海産物を輸出しているかのような印象を国際社会に植え付けようとしている。これは科学的事実ではなく、明確な政治的操作である。

“科学”の仮面を被った外交戦

福島第一原発の処理水放出は、国際原子力機関(IAEA)が安全基準に適合していると正式に認定している。トリチウムの濃度も国際基準を大幅に下回り、透明な監視体制のもとで放出が行われている。それにもかかわらず、中国政府はこの科学的コンセンサスを無視し、あえて「核汚染水」という言葉を使い続けている。

この言葉の選択こそが、中国の情報戦略の核心だ。彼らは「放射能」「汚染」といった感情的に響く語を使うことで、科学的議論を感情的対立にすり替え、世論を操作する。中国の報道官が強調する「独自のサンプル検査」も、その実態は“科学的検証”ではなく、“政治的監視”の名を借りた印象操作だ。北京は「危険性が見つかれば即制裁」という姿勢を取ることで、常に日本側に心理的圧力をかけ続けている。

輸入再開の裏にある“管理という支配”

今回の冷凍ホタテの輸入再開は、表面上は経済交流の回復を示すものに見える。だが、実態は違う。中国は輸入を認めながらも「監視を継続する」と繰り返し発言し、「安全の確認」を自らの裁量に置くことで日本側を常に従属的立場に置こうとしている。

つまり、中国は日本産食品を外交カードとして利用し、「日本の海は安全ではない」という国際的イメージを維持することで、経済的・心理的な優位を保とうとしているのだ。輸入再開が「寛大な措置」であるかのように装いながら、同時に“管理する側”という立場を強調する。これは、経済関係を通じて日本を牽制する「経済的認知戦」の典型例である。

“核汚染水”という言葉がもたらす国際的影響

「核汚染水」という呼称は、科学的に誤っているだけでなく、日本の国際的信用を損ねる強力なプロパガンダとなる。中国メディアはこの言葉を繰り返し使用し、SNS上でも自国のネット世論を動員して「日本海産物=危険」という印象を世界に広めている。

その影響は既にアジア諸国にも波及しており、韓国や東南アジアの一部でも“放射能恐怖”を煽る情報が拡散している。これは単なる外交摩擦ではなく、中国が主導する「情報空間での覇権争い」だ。中国は、国際世論の中で日本を“環境リスク国家”として位置づけることで、自国の原発安全性への批判をかわし、同時に地政学的優位を得ようとしている。

中国の戦略――“制裁”をちらつかせる威嚇外交

中国外務省の報道官は「リスクが見つかれば直ちに輸入制限措置をとる」と明言した。この発言は単なる予防的警告ではない。これは“いつでも制裁できる”という威嚇のサインである。つまり、中国は日本の輸出市場を人質に取る形で、外交交渉の圧力装置として利用しているのだ。

こうした手法は、過去にも何度も繰り返されてきた。2023年には、処理水放出直後に日本産水産物の全面輸入停止を実施。中国国内では「日本食品ボイコット」が煽られ、飲食店に嫌がらせ電話が殺到した。これは政府主導の国民動員に近い形で行われた“心理的制裁”であり、国家ぐるみの世論操作である。今回の「輸入再開」も、そのコントロールを緩めるどころか、むしろ新たな監視体制の構築を意味している。

日本が守るべきは「科学の信頼」と「情報の主権」

この問題の本質は、単に水産物の輸出入にとどまらない。日本が国際社会でどれだけ科学的透明性を示しても、中国が「疑念」という言葉ひとつでその努力を無にする構造ができてしまっていることが危険なのだ。

日本は冷静なデータ公開を続けると同時に、国際社会に対して「科学に基づく情報発信」を主導的に行う必要がある。IAEAなど国際機関と連携し、客観的な検証データを多言語で発信しなければ、中国の“情報戦”は静かに世界を侵食していくだろう。

同時に、日本国内でも「対中情報操作」への認識を高めるべきだ。中国が仕掛けるのは、軍事や経済だけではない。言葉の選び方、報道のトーン、ネット空間での世論誘導――そのすべてが“戦略”として計算されている。日本社会がそれに気づかず、「中国が言うから危ないのかもしれない」と思考を止めた瞬間、主導権は完全に失われる。

“輸入再開”は終わりではなく、次の圧力の始まり

中国が日本産ホタテの輸入を再開したというニュースは、一見、関係改善の兆しのように映る。だが実際には、監視と圧力を制度化する新たな段階の始まりにすぎない。中国が使う「核汚染水」という言葉が消えない限り、この問題は終わらない。むしろ、科学ではなく恐怖を武器にした外交が続くということだ。

日本が今問われているのは、中国にどう抗議するかではなく、自国の科学と情報の信頼をどう守るかという姿勢である。中国の“汚染された言葉”に対抗する唯一の方法は、事実と理性をもって語ることだ。恐怖ではなく透明性を、圧力ではなく科学を――それこそが、日本が世界に示すべき真の強さである。


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