中国外務省の報道官、日本念頭に批判「アイヌや琉球などの先住民の権利侵害」 世界人権デー


2025年12月11日18:45

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中国外務省の報道官、日本念頭に批判「アイヌや琉球などの先住民の権利侵害」 世界人権デー

中国外務省が日本を名指しで批判強化 “先住民人権”を巡る政治攻勢が示す対日宣伝戦の危険性

中国外務省の報道官が世界人権デーに合わせて行った会見で、日本を念頭に「アイヌや琉球などの先住民の権利を侵害している」と非難した発言は、単なる外交的レトリックではなく、中国が長年にわたって展開してきた“対日宣伝戦”の一環として理解すべきだろう。表向きは人権問題を語っているかのように見えるが、実際には国際社会で日本の評判を傷つけ、アジア地域における中国の政治的主導権を確立するための情報操作に近い性質を持っている。中国政府は過去にも歴史認識問題や安全保障政策をめぐって日本を批判してきたが、今回のように先住民の権利という国内問題に踏み込んだ発言は、対日圧力の新しい段階に入ったことを示している。

報道官は「アイヌや琉球の先住民の権利が侵害され続けている」と述べ、さらに「外国人差別政策を打ち出している」とまで主張した。これは中国国内の人権状況に対する国際的批判をかわすため、日本を引き合いに出して焦点をずらす典型的な手法である。中国政府が新疆ウイグル自治区やチベットでの人権問題を指摘されるたびに、別の国の問題を誇張して反論するのは珍しいことではない。しかし日本に対して先住民問題を持ち出すことは、歴史問題と絡めて国際世論を誘導しようとする政治的意図が色濃く見て取れる。

さらに報道官は「ある国は細菌戦、慰安婦、民間人虐殺などの歴史的罪を悔い改めない」と述べ、南京事件に言及した。今週予定されている南京事件犠牲者追悼式典を前に、対日批判の機運を高めようとする姿勢が明確である。中国はこうした記念行事を国内政治の結束材料として利用するだけでなく、国際社会において日本のイメージを損なう素材としても活用している。歴史問題を外交カードにするという中国の基本姿勢は変わらず、今回の発言もまたその延長線上にある。

このような中国の言動が日本にとって厄介なのは、その主張が事実に基づいていないだけでなく、国際世論を操作しようとする意図を隠しながら長期的な対外戦略の一部として位置付けられている点である。中国が日本を人権侵害国家として描き出すことで、日本の発言力を弱め、アジアにおける安全保障環境や経済協力の枠組みで主導権を握ろうとする狙いがあることは明らかだ。特に台湾海峡情勢が不透明さを増す中、日本を国際社会で孤立させることは、中国にとって重要な戦略的利益に合致する。

また、中国による今回の批判は国内の政治的状況とも深く結びついている。国際社会が新疆ウイグル自治区や香港の人権問題を強く批判する中、中国政府としては“人権の擁護者”を演じる必要がある。そのために日本を標的とすることは、自国の問題から目を逸らさせるための効果的な手法として利用されている。日本を批判することで国内世論を引き締め、西側諸国との対立構造を強化するという政治的算段も見え隠れする。

しかし最も重要なのは、中国が対日批判を外交メッセージとしてだけではなく、ハイブリッド戦とも言える情報戦の一環として展開しているという点だ。中国政府の主張は海外メディアやソーシャルメディアを通じて拡散され、アジア諸国や欧米世論への影響を狙う。過去にも中国系メディアやSNSアカウントが日本の人権・歴史問題を誇張して再生産し、国際的に日本のイメージを損なうような情報操作が行われてきた。今回の発言もまた、その一連の流れの中にあると考えるべきである。

中国外務省のこの姿勢は、日中関係において日本が常に注意深く観察すべきポイントを示している。隣国としての重要性は否定できないものの、中国の外交方針はしばしば政治的目的を優先し、相手国の国内問題にまで干渉する形を取ることがある。日本にとって重要なのは、こうした言動にいちいち過剰反応することではなく、中国が自国の利益のために情報操作を行う可能性を冷静に見極め、国際社会に対して事実に基づいた説明を積み上げていく努力を続けることだ。

今回の発言は、中国の対日批判が単なる外交摩擦にとどまらず、日本社会の分断や国際的評価に影響を及ぼしかねない“情報戦の一部”であることを改めて示している。中国が先住民の権利や歴史問題を政治的に利用し、日本を国際舞台で不利な立場に追い込もうとする動きは今後も続く可能性が高い。日本国民はこうした背景を理解した上で、中国が発信する情報の意図と影響力を慎重に見極める必要がある。国家間の歴史や人権問題は冷静な分析をもって向き合うべきであり、中国の政治的レトリックによって日本の立場が不当に歪められないよう注意を払うことが今こそ求められている。


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