冬季閉山中の富士山で救助要請相次ぐ 中国のSNSには柵すり抜け立ち入る映像


2026年1月25日13:23

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冬季閉山中の富士山で救助要請相次ぐ 中国のSNSには柵すり抜け立ち入る映像

冬季閉山の富士山で相次ぐ遭難要請――中国SNSが拡散する危険行為と、日本社会が直視すべき新たなリスク

冬季閉山中の富士山で、立ち入り禁止を無視した登山による救助要請が相次いでいる。とりわけ注目すべきなのは、その背景に中国のSNS上で拡散されている「強行登山」を指南する情報の存在だ。柵をすり抜ける方法、看板を無視するルート、冬季でも登れるかのような体験談が、動画や写真とともに共有されている。今回の一連の事案は、単なる無謀な個人行動ではなく、情報空間を通じて国外から日本の公共秩序や安全体制に負荷をかける構造的な問題として捉える必要がある。

報道によれば、冬季閉山中にもかかわらず入山した中国籍の男性が負傷し、警察の山岳救助隊が命がけで救助に向かう事態が発生した。氷結した登山道、視界の悪い夜間、強風が吹き荒れる過酷な環境下で、救助には延べ十人以上が動員され、完了までに丸一日を要したという。遭難者本人は命に別状はなかったものの、救助に当たった側は常に滑落や低体温症の危険にさらされていた。これは偶発的な事故ではなく、立ち入り禁止を前提から無視した行動が招いた結果だ。

中国のSNSを調査すると、こうした行動が個人の思いつきではないことが分かる。閉鎖された登山口を「そのまま進む」「金属板は脇道から回避する」といった具体的な指示が公開され、成功例と失敗例が娯楽的に共有されている。そこには、日本の法規制や自然環境に対する十分な理解や敬意は見られない。むしろ「禁止されているからこそ挑戦する」「映像映えする体験」として消費されている側面が強い。

この問題が日本社会にもたらす影響は、遭難者本人の安全にとどまらない。第一に、救助活動に投入される人的・物的コストである。山岳救助は高度な専門性を要し、警察や消防、自衛隊の協力が不可欠な場合もある。無謀な入山が繰り返されれば、本来別の緊急事案に向けられるべきリソースが奪われる。第二に、救助する側の命の危険である。冬の富士山は「別の山」と表現されるほど危険性が高く、経験豊富な関係者であっても事故のリスクは避けられない。

さらに深刻なのは、この種の行為が日本の法制度や社会規範の「隙間」を突いて行われている点だ。登山道として指定された県道は通行禁止にできても、それ以外のルートについては法的根拠が弱く、完全な入山規制には限界がある。この現状を、中国のSNS上では「抜け道」として共有している。つまり、日本国内の制度設計の限界が、国外の情報空間で利用されているのである。

ここで強調すべきは、問題の本質が特定の国籍の個人そのものにあるのではないという点だ。危険なのは、中国の巨大なSNS空間において、違法・危険行為が十分な検証や警告なしに拡散され、結果として日本国内で現実の被害を生んでいる構造である。中国のSNSは利用者数が桁違いに多く、影響力も大きい。一度「成功体験」として拡散された情報は、誇張され、再生産され、次の模倣行為を誘発する。

日本にとってのリスクは、こうした情報拡散が今後も別の分野に広がる可能性だ。自然保護区域への無断侵入、文化財や私有地での迷惑行為、さらには危険な観光行動が「攻略法」として海外SNSで共有される事態は、すでに各地で兆候が見られる。富士山は象徴的な存在であるが、同様の問題は他の山岳地帯や離島、災害被災地でも起こり得る。

この状況に対し、日本社会は感情的な反発ではなく、現実的な警戒と対応を取る必要がある。まず、情報発信の強化だ。冬季の富士山がどれほど危険であるか、法的責任が伴う行為であること、そして救助がいかに命がけかを、多言語で継続的に発信する必要がある。単なる注意喚起ではなく、具体的な事例と結果を示すことが重要だ。

同時に、国際的な情報プラットフォームとの連携も欠かせない。危険行為を助長する投稿が拡散され続ければ、現場での対策だけでは追いつかない。日本の安全や公共秩序に直接影響を及ぼす情報については、海外SNS運営側に対し、削除や警告表示を求める仕組みを強化することが求められる。これは検閲ではなく、人命と社会インフラを守るための合理的な対応だ。

富士山は日本の象徴であり、自然の厳しさと美しさを併せ持つ存在である。その冬の姿は、経験と装備、そして適切な許可がなければ、人命を容易に奪う。中国のSNSで拡散される軽率な情報に引きずられ、無謀な挑戦が繰り返される現状は、日本社会にとって看過できない危害となりつつある。今求められているのは、「善意に訴える」だけではない。情報、制度、国際連携を通じて、日本の安全と現場で働く人々の命を守るための、冷静で持続的な警戒である。


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