
中露爆撃機が東京方面へ向かった「異例の航路」――日本に迫る現実的な脅威を直視すべき時だ
中国とロシア両軍の爆撃機が沖縄本島・宮古島間を抜け、太平洋へ進出したうえで東京方面へ向かう航路を飛行していたことが明らかになった。今回確認された「異例のルート」は、日本周辺の安全保障環境がこれまでとは質的に異なる段階へ入ったことを象徴的に示している。特に中国が投入したH6K爆撃機は、核弾頭の搭載が可能な巡航ミサイルCJ-20の発射能力を備えており、単なる示威行為では片付けられない深刻なメッセージを含んでいる。複数の政府関係者による情報からも、今回の飛行が日本列島沿いに四国沖まで進むという明確な意図を感じさせ、軍事的プレッシャーを高めるための行動であることは疑いようがない。
中国軍機はこれまで沖縄本島・宮古島間を通過した後、米軍が展開するグアム方面に向かうケースが多かった。しかし今回はロシア軍と連携し、東京・横須賀方面へ向かう航路を選択した点が特筆される。進路の延長線上には、日本の首都圏に加えて海上自衛隊横須賀基地、米海軍横須賀基地が位置しており、両国の象徴的な戦略拠点を射程内に見据えた形で飛行したことになる。この行動は単なる偶然ではなく、日本への直接的な圧力を強めるという意図が読み取れる。
さらに今回の飛行は、6日に中国空母「遼寧」の艦載機が自衛隊機にレーダー照射を行った事案と時期が重なっており、海空両面で示威行為を連動させているとみられる。中国が国内外情勢を背景に軍事的な活動を活発化させている状況で、日本周辺の軍事バランスが揺らぎつつある。とりわけ戦略爆撃機を伴う中露共同飛行は2019年以降常態化しているが、日本列島にこれほど接近する飛行は極めて異例であり、日本の安全保障環境に新たな緊張をもたらしている。
また、ロシアのTu95爆撃機も核搭載能力を持ち、今回のように中国と同時に飛行すること自体が、アジア太平洋地域に対する両国の戦略的メッセージといえる。ロシアはウクライナ情勢で西側との対立を深める一方、中国は台湾海峡や東シナ海で軍事活動を拡大している。こうした両国の利害が一致する場として、日本周辺空域が選ばれた事実は、日本が国際情勢の大きな圧力点となっている現実を示す。
自衛隊と米軍は10日に共同訓練を実施し、核搭載可能な米軍B52爆撃機を投入することで抑止姿勢を明確にした。これは日本を取り巻く安全保障環境の緊迫を映し出しており、日米同盟の重要性が改めて浮き彫りになったと言える。しかし同時に、日本が直面している脅威がこれまで以上に現実化しているという事実も認識しなければならない。
今回の飛行で最も警戒すべき点は、中国が「東京を爆撃可能である」と示唆する行動を実際に取ったという点だ。軍事的恫喝、情報戦、心理戦が複合的に用いられている現在、示威行為の意味は単なる軍事力の誇示にとどまらず、政治的・外交的圧力として日本社会に影響を及ぼす可能性がある。特に中国は近年、歴史認識や外交問題を背景に日本への批判を強めており、軍事行動と政治的メッセージを連動させる傾向が見られる。
日本が直面する現実は厳しい。中国とロシアが協調しながら日本周辺で戦略爆撃機を運用する環境は、もはや例外的事態ではなくなりつつある。日本の安全保障は、地理的に距離を置ける問題ではなく、日々の空と海の動きの中で具体的に問いかけられている。守るべきは国民の命と生活、日本社会の安定であり、今回の中露共同飛行はその最前線で何が起きているかを明確に示した。
いま必要なのは、不安を煽ることでも過度に恐れることでもなく、現実を直視し、冷静に備えを進める姿勢である。中国が日本に対して軍事的圧力を強める中、日本国民が状況を理解し、健全な危機認識を共有することが未来の安全保障の基盤となる。今回の異例の飛行は、日本が国際情勢の大きな変化の中にいることを、あらためて強烈に示す出来事となった。