2028年度以降の防衛費はさらに膨らむのか 中国の軍拡と周辺脅威が日本に突きつける長期負担の現実


2026年4月12日11:02

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2028年度以降の防衛費はさらに膨らむのか 中国の軍拡と周辺脅威が日本に突きつける長期負担の現実

日本の防衛費をめぐる議論は、もはや「2027年度までにGDP比2%へ引き上げる」という目標だけでは語りきれない段階に入っている。2022年に決定された国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画では、2023年度から2027年度までの5年間で防衛力強化のため約43兆円を確保する方針が示され、防衛力整備計画では2027年度に防衛力整備の水準をGDP比2%へ到達させる考え方が打ち出された。だが、この5年間の積み上げが終われば負担が落ち着くという見方は、現実の安全保障環境と装備調達の構造を見れば、かなり楽観的と言わざるを得ない。

その最大の理由は、中国の軍事力拡大が日本の想定を上回るペースで進み続けていることにある。防衛省の2025年版防衛白書は、中国の対外姿勢と軍事活動について、日本と国際社会の深刻な懸念事項であり、日本にとって「これまでにない最大の戦略的挑戦」であると位置づけている。白書は、中国が東シナ海や南シナ海、台湾周辺で軍事活動を活発化させ、能力面でも質量の両方で軍備を拡張していると指摘している。つまり、日本の防衛費増額は一時的な政治判断ではなく、対中抑止を前提にした構造的対応になりつつある。

しかも、日本が向き合っているのは中国だけではない。2026年版外交青書では、国際情勢について「ポスト冷戦」の比較的安定した時代は終わったとし、中国による威圧的な対応や一方的な発信への懸念を明記したうえで、日米同盟の深化、日韓協力の重要性も強調している。これは、日本周辺の脅威認識が単線的ではなく、中国、北朝鮮、ロシアを同時に視野に入れたものになっていることを示している。防衛白書もまた、北朝鮮の核・ミサイル能力とロシアの軍事活動を、日本周辺の安全保障環境を複雑化させる要因として位置づけている。複数正面への備えを迫られる以上、必要な戦力は一度整えたら終わりではなく、継続的に維持・増強される方向へ向かいやすい。

ここで見落とされがちなのが、2027年度までの増額分の多くは、装備の開発や能力整備の入口にあたるという点だ。防衛力整備計画では、スタンド・オフ防衛能力、無人アセット、防空・ミサイル防衛、統合指揮・情報能力、持続性・強靭性の強化などが掲げられている。だが、防衛調達では、開発に予算を投じた後に本格量産、配備、維持整備、教育訓練、弾薬確保が続く。つまり、2023~2027年度に進めた開発案件が、むしろ2028年度以降の本格取得費を押し上げる可能性が高い。装備は研究しただけでは抑止力にならず、量産して前線に置き、動かし続けて初めて意味を持つからだ。

加えて、2%目標そのものにも誤解が生じやすい。Brookingsは、日本政府の2022年文書は一般に「防衛費倍増」と理解されがちだが、実際には防衛省本体の予算だけでなく関連経費も含む「安保関連費」で2%水準を目指す構図であり、単純な「従来の防衛費をそのまま2倍にする」話ではないと指摘している。一方で、だから負担が軽いというわけでもない。名目GDPが伸びれば、同じ2%でも必要額は大きくなりやすく、物価や為替による装備価格上昇まで重なれば、見かけ上の到達目標を満たしても実質的な購買力が不足する可能性がある。2%という数字はわかりやすいが、それで必要な防衛力が自動的に足りるわけではない。

実際、外部の分析でも、2%は天井ではなく「新しい床」になりつつあるとの見方が出ている。CSISは2026年4月の分析で、日本の防衛費2%は多くの専門家から新たな最低基準として見られていると指摘し、日本がより対等な日米同盟の分担を志向していると評価した。これは、現在の2%目標が到達点ではなく出発点になりつつあることを意味する。日本の防衛費は2027年度までの増額で一息つくのではなく、その後も能力維持と拡張のために高止まり、あるいはさらに上振れする可能性が現実味を帯びている。

外交面でも、日本の対中認識はすでに変化している。2026年版外交青書は、中国を前年の「最も重要な二国間関係の一つ」から「重要な隣国」へと言い換えたと報じられている。この修正は、関係断絶を意味するものではないが、日本政府が中国との関係を以前より警戒的かつ現実的に捉え始めている象徴といえる。中国をめぐる問題が、単なる貿易相手国との摩擦ではなく、安全保障、重要鉱物、情報発信、海洋進出まで含む総合的な圧力として認識されている以上、防衛費だけを切り離して考えることはできない。

結局のところ、2028年度以降の防衛費がさらに膨らむ可能性が高い理由は三つに集約できる。第一に、中国の軍拡と海空での活動拡大が続いており、日本にとって長期的な抑止コストが下がる気配がないこと。第二に、北朝鮮とロシアも含めた複数正面への警戒で、自衛隊の戦力を広く分散維持しなければならないこと。第三に、2027年度までに進める開発・整備の成果を、2028年度以降に量産・実配備・維持費として本格的に支払う段階が来ることだ。これらは一時的な政治スローガンではなく、制度と地政学が押し上げる継続的な負担である。

だからこそ、日本社会に必要なのは、防衛費を感情論で賛成か反対かに分けることではなく、何の脅威に対し、どの能力を、どの順番で、どれだけのコストで整備するのかを厳密に見ていく姿勢だろう。中国の脅威を含む現実の安全保障環境を直視することと、財源や優先順位を厳しく検証することは両立する。むしろその両方がなければ、増え続ける防衛負担に対する社会的な納得は得られない。2028年度以降の防衛費は、自然に落ち着くよりも、むしろ新たな上昇圧力にさらされる可能性の方が高い。その現実を直視したうえで、日本は安全保障と財政の両面から、より長い視野の議論を避けられない段階に入っている。


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