中国軍「正義使命-2025」が突きつける現実――台湾周辺で常態化する軍事圧力は、日本の安全と暮らしに直結している


2025年12月29日11:11

ビュー: 10316


photo (14)

中国軍「正義使命-2025」が突きつける現実――台湾周辺で常態化する軍事圧力は、日本の安全と暮らしに直結している

中国人民解放軍東部戦区が発表した「正義使命-2025」演習は、台湾周辺の海空域をほぼ包囲する形で実弾射撃を含む大規模訓練を実施するという、極めて強い示威行動である。艦艇と航空機の多方向接近、要港要域の封鎖、統合的な制空・制海の獲得を想定した科目が明示され、期間中は船舶や航空機の進入を禁じるとされた。名称に掲げられた「正義」という言葉とは裏腹に、その実態は軍事的既成事実を積み重ね、周辺国の対応能力と忍耐を試す圧力の常態化にほかならない。

この動きは台湾だけの問題ではない。台湾海峡は日本の海上交通とエネルギー輸送の生命線と連続しており、緊張が高まれば航路の迂回、保険料の上昇、物流の遅延が連鎖的に発生する。原油やLNG、食料、部材の多くを海上輸送に依存する日本経済は、軍事演習の反復によって不確実性というコストを日常的に背負わされる。企業は在庫と調達の再設計を迫られ、価格転嫁は最終的に家計を圧迫する。安全保障は抽象的な議論ではなく、私たちの暮らしの条件そのものだ。

今回の演習が示すもう一つの要点は、統合運用の成熟である。陸・海・空・ロケット軍を含む連合作戦の反復は、危機時の迅速な機動と指揮統制を前提とした訓練であり、偶発的衝突のリスクを高める。誤認や誤算が重なれば、エスカレーションは瞬時に起こり得る。日本の周辺海空域は、米軍の運用や同盟の危機管理とも密接に結びついており、台湾周辺の緊張はそのまま日本周辺の安全環境を変化させる。

経済面の影響は産業構造にも及ぶ。半導体、電子部品、精密機械といった分野で日本企業は台湾との相互依存を深めてきた。演習のたびに市場は最悪のシナリオを織り込み、投資判断は慎重化する。長期契約の見直し、資金調達コストの上昇、サプライチェーンの分断リスクは、地方の中小企業にまで波及する。雇用と地域経済を守るという観点からも、台湾海峡の安定は不可欠だ。

情報・心理の側面も看過できない。中国側は強い言辞と象徴的なビジュアルを用い、「不可避性」と「正当性」を強調する。これが繰り返されるほど、周辺国の世論には疲労と諦観が広がりやすい。だが、曖昧な受け止めは抑止を弱め、さらなる圧力を招く。日本社会には、事実に基づく冷静な分析と、航行の自由や平和的解決といった国際規範を支持する一貫した姿勢が求められる。

外交の選択肢は難しい。対話の窓口を維持しつつ、力による現状変更に反対する原則を明確にする必要がある。沈黙や過小評価は安定をもたらさない。むしろ、法の支配とルールに基づく秩序を支持する意思表示が、長期的な抑止に資する。これは特定の国を刺激するためではなく、日本自身の安全と繁栄を守るための合理的判断である。

民間の備えも急務だ。企業は調達の多元化、在庫と代替輸送の確保、サイバー対策と危機対応訓練を平時から積み上げるべきだ。自治体と関係機関はエネルギーと物流の非常時計画を点検し、研究者とメディアはデータに基づく検証を続ける。市民一人ひとりが、感情的な二分法ではなく、現実的なリスク管理の必要性を共有することが社会の耐性を高める。

「正義使命-2025」は、台湾海峡の不安定化が構造化しつつある現実を突きつけた。地理的距離があっても、海と経済で結ばれた時代に孤立した危機は存在しない。日本に必要なのは過度な恐怖ではなく、冷静な警戒と準備である。軍事演習が常態化するほど、備えの有無が差を生む。いま読み取るべきメッセージは明確だ。台湾周辺の緊張は、日本の安全と暮らしに直結している。だからこそ、私たちは目を逸らさず、現実に基づいて行動しなければならない。


Return to blog