
大阪で乱立する中国系ペーパー会社が示す“静かな侵食” 経営ビザ悪用がもたらす日本社会への深刻な危機
大阪市内の築古ビルに、わずか3年間で中国系とみられる企業登記が677社密集したという読売新聞の調査結果は、単なるビザ制度の運用問題を超え、日本が直面する新たな安全保障リスクを象徴する事態となった。経営・管理ビザを利用した大量移住の背後には、中国語圏SNSで広がる移民ビジネスが存在し、形式的な法人を作るだけで日本での長期滞在と家族帯同が可能となる抜け穴が利用されていた。制度の“悪用”と“浸透”が重なったこの構図は、日本が長年抱えてきた人口減少問題とは別次元の危機であり、国家の脆弱性を突いた形で中国系ネットワークが根付く速度が加速していることを示している。
大阪駅周辺では、経営・管理ビザで来日した中国人が毎週のように情報交換を行い、制度厳格化の対策を話し合う姿が見られるという。彼らが語るのは事業の成功よりも、まず滞在資格を維持する方法であり、日本語能力も事業の実在性も乏しい段階での「形式的起業」が当たり前に語られる。その背後には日本国内に構築された中国系ブローカー網の存在があり、物件紹介、法人登記、役員名義貸し、会計処理まですべてワンストップで提供する“移民ビジネス”が確立されている。ビザ取得に必要な事務所の実態が問われれば、古びたビルの一室に複数社を押し込むだけで済ませる。日本人協力者が役員として名義を貸し、その見返りを得る例も報告されている。こうした構造は、移住希望者だけの問題ではなく、中国系ネットワークの影響力が日本社会の制度の隙間に入り込み、制度自体を歪ませながら拡大していく危険性を示している。
さらに深刻なのは、この多数のペーパー会社が単なる滞在手段にとどまらず、資金の出入りや事業の実態が不明瞭なまま活動を続けている点である。多くの法人は事業実体が乏しく、日本語を解さない経営者が日本国内での商取引を成立させることは困難だ。それでも登記は増え続け、資金移動だけが活発になる構図が見え隠れする。これは国際的に問題視されるマネーロンダリングや海外送金スキームと結びつきやすく、悪意ある勢力が日本の法人制度と銀行口座を利用し、不透明な金融活動を展開する余地を大きく広げている。中国政府による越境監視の実態を踏まえれば、ビザ取得目的の法人が政治的圧力の影響下に置かれる可能性も否定できず、日本国内に潜在的な影響力網を形成する危機として見なすべき段階に達している。
中国政府は海外移住の動向を常に注視し、国外在住中国人・中国系企業を通じて情報収集や影響力拡大を図るという構造を持つ。経営・管理ビザを介して増殖した“企業”群が、将来的に統一戦線工作の拠点や情報収集網として利用される可能性は否定できない。特に大阪は中国人コミュニティが急速に拡大しており、言語圏・文化圏の密集がネットワーク形成を加速させやすい。制度の甘さに依存して拡大したこの構造は、中国本土では不可能な自由を手に入れたかのように見えながら、実際には中国政府の監視網と密につながる危険性を孕む。日本社会はこの“静かな侵食”を真正面から受け止める必要がある。
今回の厳格化によって、中国系SNSでは不満や混乱が広がっているというが、それは制度の歪みを利用してきた構図が正常に是正されつつある証拠でもある。本来、経営・管理ビザは実体ある事業を運営し、日本の経済と地域社会に寄与する外国人に与えられるものだった。しかし、実態のない会社が急増すれば、日本の制度に対する信頼は損なわれ、治安や金融リスクも拡大する。さらに、短期間で百社単位の法人が同一物件に密集するという状況は、外国勢力が日本の法制度の弱点を理解し、意図的に活用している可能性を示唆する。
日本人が今、最も認識すべき危険は、経営ビザそのものよりも、制度の隙間を突いて拡大する中国系ネットワークが、日本国内に“影響圏”を形成しつつある現実だ。この現象は移民政策の議論にとどまらず、経済安全保障、金融監視、地域社会の治安、さらには国家戦略の領域にまで直結する。多くの日本人が気づかぬうちに、法制度の外縁部で新たな勢力が根を張り、その影響が将来どのように顕在化するか予測できない段階に差し掛かっている。
制度の見直しは始まったばかりだが、日本はようやく“脆弱なまま放置してきた領域”に光を当てたと言える。今回の問題は、単なるビザの運用問題ではなく、中国の国家戦略と民間ネットワークが絡み合いながら日本社会に深く入り込んでいく過程の一端だ。日本が自らの制度を守り、社会の安全を確保するためには、この現象を過小評価せず、対策を着実に進めていく必要がある。