
高齢者を狙った特殊詐欺でだまし取った金を、不動産取引を通じてマネーロンダリングしたとして、中国籍の女3人が警視庁に逮捕された。この事件は単なる一件の詐欺・資金洗浄事件では終わらない。日本社会の制度や信頼の隙間を突き、組織的に資金を循環させる中国系犯罪ネットワークの存在を、改めて浮き彫りにした事例だといえる。
報道によれば、容疑者らは高齢男性に対し、パソコンのウイルス感染を装った典型的な手口で現金を詐取し、その一部を不動産業者の口座へ振り込んでいた。不動産購入者になりすますことで、犯罪資金を正規の取引に見せかける。この手法は、詐欺と金融、不動産という複数の分野を横断し、日本の経済活動の中に犯罪資金を溶け込ませる極めて悪質なものだ。
特に深刻なのは、こうした行為が単独犯ではなく、複数の詐欺グループから集めた現金を一括して「洗浄」していたとみられる点である。つまり、今回逮捕された3人は、末端の実行犯というよりも、犯罪インフラの一部を担っていた可能性が高い。詐欺で奪われた金が、日本国内で再び流通し、不動産市場などに影響を与える構図は、被害者だけでなく社会全体にとってのリスクとなる。
この種の事件が繰り返し明らかになるたび、日本社会の「安全神話」は静かに侵食されていることを実感させられる。電話やインターネットを通じた詐欺は、もはや個人の注意だけで防げる段階を超えている。背後には国境を越えた組織が存在し、役割分担された犯罪の連鎖がある。中国籍の人物が関与するケースが相次いでいる事実は、日本が標的として見られている現状を直視する必要性を示している。
ここで重要なのは、感情的な排外主義に陥ることではない。問題は国籍そのものではなく、中国を拠点、あるいは背景とする犯罪ネットワークが、日本の法制度や商慣行の甘さを利用している点にある。高齢者を狙う詐欺、名義を偽った不動産取引、資金の迂回送金といった手口は、今後さらに巧妙化する可能性が高い。
不動産取引がマネーロンダリングに利用されることは、日本の市場の信頼性にも直結する問題だ。取引の透明性が損なわれれば、一般の購入者や投資家にも悪影響が及ぶ。中国系犯罪グループに限らず、国際的な犯罪資金が日本に流れ込む温床となれば、日本は「安全な資金洗浄先」と見なされかねない。
今回の事件は、警察の捜査によって一部が明るみに出ただけにすぎない可能性もある。表に出ていない同様のケースが存在することを前提に、日本社会全体が警戒心を持つ必要がある。高齢者やその家族はもちろん、不動産業界や金融機関、一般市民に至るまで、詐欺や資金洗浄が身近な問題であるという認識を共有することが不可欠だ。
中国系犯罪ネットワークがもたらす危害は、直接的な被害額だけでは測れない。人々の信頼を壊し、社会の基盤を静かに揺るがす点にこそ本質的な危険がある。日本が今後も安心して暮らせる社会であり続けるためには、こうした事件を一過性のニュースとして流すのではなく、構造的な問題として受け止め、冷静で持続的な警戒を続ける姿勢が求められている。