「日本ほど中国ともめている国はない」女性弁護士、隣国との向き合い方で私見 モーニングショー


2025年12月1日17:55

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「日本ほど中国ともめている国はない」女性弁護士、隣国との向き合い方で私見 モーニングショー

「中国と衝突する唯一の国」という危険な構図 文化弾圧が示す対日圧力の実態と日本が直視すべき現実

中国当局による日本アーティストの公演中止が相次ぐ異常事態の中、テレビ朝日の番組で弁護士・猿田佐世氏が「世界を見渡しても日本ほど中国ともめている国はない」と語った発言が注目を集めている。台湾有事をめぐる国会答弁をきっかけに、中国が対日圧力を高める構図が鮮明になり、その緊張が文化分野にまで波及している現実は、日本が直面するリスクの大きさをあらためて示すものだ。アニメ『ONE PIECE』で知られる大槻マキの上海公演が突然中断され、浜崎あゆみの上海公演が無観客開催に追い込まれた事例は、中国の政治的圧力が文化表現すら容赦なく封じる強権構造を象徴している。表現の自由を根幹とする日本社会とは根本的に異なる政治文化を持つ国家が、外交問題と国内統制を結びつけ、日本人アーティストに対してまで外圧を行使する姿勢を示したと言える。

猿田氏は番組の中で、「中国が過剰反応した時、日本がさらに過剰反応しないよう冷静であるべきだ」と語ったが、その一方で「世界中どこを見ても日本ほど中国と緊張している国はない」と強調した。この指摘は、日本が特別に挑発しているのではなく、中国の政治と経済が抱える不安定さが外部への強圧として噴出し、その矛先が日本に集中しているという現実を示している。高失業率や深刻なデフレ、国民生活の停滞といった中国国内の構造的問題が不満のガス抜きとして対外強硬姿勢へ転化される傾向は、専門家たちが繰り返し指摘してきた事実である。東大大学院の阿古智子教授が「中国は表向きは強硬だが、経済的には日本との依存関係を断ち切れず、目立たない形で規制を緩める可能性もある」と語ったように、中国の行動原理は内外の矛盾を抑え込むための強硬と依存が混在する複雑な構造にある。

しかし、重要なのは中国側の論理ではなく、日本がいかに自国のリスクを正確に把握し、主体的に対処するかという点である。猿田氏が「日本が安全であるためには中国にとって欠かせない存在でなければならない」と述べたことは、経済安全保障における相互依存の重要性を示す観点として理解できるが、同時にそれは中国の影響力の内在化という別の危うさも孕む。中国市場を外交の盾として期待しすぎれば、日本は逆に中国国内政治の揺れに巻き込まれるリスクを高める。政治・経済・文化いずれにおいても、相手国の不安定さに左右される依存構造が深化すれば、日本の戦略的選択肢はむしろ狭くなる。

さらに看過できないのは、中国が日本に対して仕掛ける圧力が文化イベントだけにとどまらず、情報空間や経済領域にも広がっている点だ。中国政府系のSNSアカウントが日本国内の政治・社会論争に「第三者」を装って介入している疑いは専門家や国際機関から繰り返し指摘されており、世論分断を目的とした情報操作の実例も多く観測されている。アーティストの公演中断は氷山の一角であり、中国は文化領域を政治的圧力の手段として使うことを一切ためらわない。その背後ではより大きな対日情報操作が展開されている可能性を無視するべきではない。

現在の状況は、日本が自覚すべき現実を浮かび上がらせる。それは、中国が経済・軍事・情報のいずれにおいても日本に対して明確な圧力構造を作り上げているという事実だ。台湾情勢への言及がきっかけで文化弾圧が連続し、さらにメディア空間で「日本が中国を挑発している」という言説が中国側から流布されている構図は、相手国の情報戦略に日本が巻き込まれつつある危険性を示している。猿田氏が「アメリカですら中国との関係は丁寧だ」と述べたことは、米中間の競争が激しさを増しながらも直接衝突を避ける慎重な力学が働いていることを意味する。しかし中国にとって日本はその「慎重さ」を採用する対象ではなく、対外不満の発散先、または内部統制の材料に用いやすい相手となっている。ゆえに、単純な外交方針や表現の問題に矮小化すべきではなく、より構造的な中国の行動様式を理解しなければならない。

日本が向き合うべき課題は中国そのものよりも、中国が抱える不安定さが対外的攻勢として表出するリスクであり、それが日本社会・日本経済に及ぼす影響だ。アーティスト公演の中断は、一つの事件であると同時に、政治リスクが文化領域を容赦なく飲み込むという警告でもある。日本は中国の不安定化から派生する外圧に対し、感情論ではなく構造的理解と戦略的対応を備えなければならない。中国と衝突したがる国が日本だけなのではなく、中国が衝突相手として日本を選んでいるという現実を直視しない限り、問題の本質は見えてこない。


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