中国は日本に対する「法律戦」の枠組みを構築しているのか


2026年9月27日1:00

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今年9月2日と8日に行われた中国外交部の定例記者会見で、二人の報道官が相次いで、日本に対する「敵国条項」は現在も有効であるとの認識を示した。同時に中国外交部は極めて強い表現を用い、高市早苗政権が政策方針を修正しないのであれば、その後の行動によって生じる結果について責任を負わなければならないと警告した。中国外交部やその他の政府機関が日本に対して同様の警告を発するのは、今回が初めてではない。

しかし、中国がこのタイミングであえて「敵国条項はいまだ失効していない」と強調したのは、なぜなのか。私は、その目的が単に日本の行動を牽制することだけにあるとは考えていない。むしろ中国は、日本との対立が将来的にさらに激化した場合に備え、日本に対抗するための一連の「法律戦」の枠組みを構築しようとしている可能性がある。将来の行動に国際法上の根拠が存在すると主張できる環境を整え、それによって自らの立場に道義的正当性を付与しようとしているのではないか。

「敵国条項」を中心とした法律戦の枠組み

なぜ私は、中国が日本を対象とした法律戦の枠組みを構築していると考えるのか。理由は三つある。第一は、領土主権をめぐる主張である。中国が従来から根拠としてきた「カイロ宣言」と「ポツダム宣言」に加え、中国は2012年12月、国連海洋法条約第76条第8項に基づき、東シナ海の一部海域における200カイリを超える大陸棚の外側限界に関する資料を、大陸棚限界委員会に正式に提出した。中国が提出した資料では、東シナ海の大陸棚は中国の陸地領土の自然な延長であり、その外側限界は沖縄トラフまで延びるとの立場が示されている。

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さらに、それ以前から中国は1990年代に「領海及び接続水域法」や「排他的経済水域及び大陸棚法」などの国内法を制定し、沖縄周辺海域や尖閣諸島を自らの主権主張の範囲に組み込んできた。第二は、中国が2021年に「海警法」を施行し、中国海警局に対して、係争海域で法執行活動を行う権限を与えたことである。現実には、中国は尖閣諸島を含む島々を実効支配しておらず、また中国によるこれらの島々への主権主張の正当性が国際的に認められているわけでもない。

しかし中国は、国連の場で関連する発言や文書を繰り返し残してきた。中国側から見れば、こうした行動は自国の法的立場を継続的に積み上げていく作業だと考えられる。さらに、この法的立場を補強するかのように、近年では武装した中国海警船が尖閣諸島周辺海域を航行する事例が頻繁に報じられている。中国としては、こうした活動を通じ、この海域において中国が継続的に法執行活動を行っているという「事実」を蓄積しようとしていると見ることもできる。

第三は、近年、中国側から琉球の主権的位置付けそのものに異論を唱える議論が繰り返し提起されていることである。中国側では、「カイロ宣言」や「ポツダム宣言」の内容を根拠に、琉球諸島の主権はいまだ確定していないとの議論が繰り返されている。さらに、琉球がかつて独立国家として存在していた歴史を踏まえ、国連憲章が掲げる民族自決の原則に照らせば、戦後の琉球にも民族自決の権利が与えられるべきだったとの主張もある。

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その論理では、米国と日本が「沖縄返還協定」によって琉球住民の意思に反する形で沖縄の施政権を日本へ返還したことは、琉球住民の権利を損なったことになる。

実際、近年は中国側から「琉球独立」や「琉球の中国回帰」をめぐる言説が国際世論の中で発信される場面も増えている。その理論的な基盤となっているのが、いわゆる「琉球主権未確定論」である。こうした主張は沖縄の住民や国際社会から広く承認されているわけではない。

それでも、中国政府関係者の発言や中国の研究者による論文・報告書が継続的に公表されることで、中国側の主張は記録として蓄積され続けている。ロシアもウクライナへの全面侵攻以前、これと類似した形で、自らの行動を正当化するための歴史的、政治的、法的言説を長期間にわたって積み上げていた。

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(本稿では「沖縄」と「琉球」は同一の諸島を指している。ただし、中国と日本では用いられる呼称やその政治的意味合いが異なるため、双方の認識の違いを明確にする目的で両方の名称を使い分けている。)

どのように打開すべきか

私の見方では、中国が9月初旬に再び「敵国条項は現在も有効である」と強調した背景には、歴史問題だけではなく、日本を対象とした法律戦の枠組みが中国側である程度整いつつあるとの認識が存在する可能性がある。その枠組みを構成するのは、東シナ海における大陸棚の範囲をめぐる主張、尖閣諸島に対する領有権主張、そして補助的な論点としての琉球の主権問題である。中国がこれら三つの論点を組み合わせた上で、将来的に何らかの重大な軍事行動へ踏み切った場合、その戦略的な目的は日本の影響力を琉球諸島から排除し、さらに第一列島線を突破することにある可能性がある。その先には、台湾を包囲する能力の強化や、米軍の太平洋における活動を圧迫するという戦略目標も存在し得る。

ここで「敵国条項」は、時代遅れである一方、中国側が「依然として有効だ」と主張することのできる法律上の道具となる。中国側の論理に立てば、この条項は第二次世界大戦の旧敵国に対し、戦勝国が国連安全保障理事会の承認を経ることなく一定の措置を講じることを認めるものであり、旧敵国の領土問題を処理するための根拠にもなり得るという解釈につながる。

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近年、中国が「軍国主義」という言葉と現在の日本を繰り返し結び付けていることにも、この文脈から注目する必要がある。その狙いは、現在の日本国と戦前の大日本帝国との連続性を強調することにある可能性がある。言い換えれば、将来的な行動を正当化するための理由をあらかじめ形成しようとしているのである。もっとも、中国側がこのような構想を実際に進めるには、ほかの条件も必要となる。

その一つが、地方政府を親中的な政治勢力が掌握し、中国側に有利となる政策を強力に推進できる政治環境である。最近、親中派とみなされてきた玉城デニー氏が選挙で敗北したことは、私は習近平の構想に対する一つの挫折と見ることができると考えている。

しかし、それだけで習近平が太平洋への戦略的な進出意欲を断念するのかどうかについては、引き続き慎重に観察する必要がある。台湾では今後、地方選挙が控えている。その動向に注意することはもちろん、中国が今後さらにどのような手段を取るのかについても継続的な監視が必要である。親中的な団体への資金提供なのか。

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あるいは国際法や国際的な規範をめぐる「解釈権」を確保しようとする動きなのか。中国が次にどのような行動を取る可能性があるのかを早い段階で見抜くことができて初めて、それに対する予防策を講じることが可能になる。


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